◆先祖供養の意義~親のお墓は子が建てる~
いきなり質問です。皆さんが「そろそろお墓のことを考えないと・・・」と思ったとしましょう。 その時に頭の中に思い浮かべているのは、誰のお墓のことでしょうか?
「もちろん、自分が入るお墓に決まっているじゃないですか!」というお答えがほとんだと思います。 ところが、この時点からすでに間違っているのです。
今、このページをお読みになられている世代の方々の多くは、おそらく核家族世帯かそれに近い家族構成なのではないでしょうか。 そして冒頭の「そろそろお墓を・・」という思いの中には、 「仕事も定年退職し、息子は社会人として頑張っており、娘は幸せを掴んで、あとは初孫を見せてくれればこんなに嬉しいことはない。 私たちのするべきことは、そろそろ母さんと一緒に入るお墓の準備くらいなので、ゆっくり考えておこうか」といった感じではないでしょうか。
もちろん、年齢や家族構成の違いで若干の思いの違いはあるでしょうが、皆さん大体のお考えは似ているような気がします。 そして「子供たちが慎ましやかに頑張っているのに、お墓や墓地のことで迷惑をかけたくない」という言葉を付け加えれば、 皆さんがお墓のことを考える動機としては十分すぎるはずです。
しかしながら、繰り返しになりますが、この考えは大きな間違いと言わざるを得ません。
なぜならば、正しい先祖供養とお墓の建て方というお話の大前提は、
「親のお墓は子が建てる」だからです。※子とは先祖祭祀を継承する者
本来、お墓は「親の姿だと思え」という考え方に基づいて形作られているのです。
すなわち、親のお墓は子が建てるように設計され、それを代々続けることによって、 子孫繁栄がかなえられるようになっているのです。
子供が建てるべき親のお墓を親自身が建立してしまうということは、子供の仕事を親が奪ってしまうことになり、 大げさに言いますと、親子の繋がりさえ希薄にしてしまうことになりかねません。 このような状況をご先祖様がどうして喜びましょうか。
このような風習や考え方が当たり前になっておりますのは、 戦後様々な理由からお墓や墓地に対する考え方が大きく変化してしまったことによります。
現代の日本社会が抱える少子化・人口減少・高齢化・核家族化は、実は先祖供養とも密接につながっているのです。 家系の継承者不足、断絶・絶家、そして核家族家庭に生まれ、祖父や祖母の顔さえ知らずに育った孫たちは、 今自分がこの世にあることがご先祖様のおかげであることを教えられることもなければ、 考える機会も与えられず、ただ、お盆だから、お彼岸だからと、なんとなく 先祖のお骨が納められている墓前で手を合わせるだけの状況になってしまうのです。
お墓は単なる「納骨場所」ではありません。 ぜひ皆さんも、この機会に正しい先祖供養と祭祀継承を知っていただければ、この上なく思います。
(平成24年12月)
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